今まで数多くの相続の場面に立ち会ってきました。今日はその中でも難しかったお話をさせていただきます。とあるご夫婦(お子様はおられない)の双方の、任意後見と身元引受を受任していた時の話です。ご主人は足が少し弱っておられました […]
相続があったときに、どのように手続きを進めればよいか、また、不動産・預貯金・株式(有価証券)などの遺産があるが、何から手をつければよいか分からない方のために、今回は、相続があってから、相続人の調査や相続財産の調査方法、遺産分割協議に入るまでの流れについて紹介します。
相続人を確定する
まずは亡くなった方(被相続人)の「相続人が誰か」を確定しなければなりません。役所で被相続人の出生時から亡くなるまでのすべての戸籍謄本等を取得し、現在生存している相続人を確定します。戸籍謄本等は本籍地を定めている役所でないと取得できません。本籍地と住所は別の場所に定めていることも多いため、本籍地が分からない場合は、被相続人の住民票の除票の写しを取得し、本籍地を確認することができます。
◆相続の順位
相続人には相続する順番があります。次の(1)から順に相続人に該当する者がいないか取得した戸籍謄本等を用いて調査をします。被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人に当たります。
(1)被相続人に子どもがいる場合は、配偶者と子どもが相続人に当たります。
子どもが被相続人よりも先に亡くなっているときは、子どもの子(被相続人の孫)が相続人に当たります。ただし、被相続人の子どもが養子だった場合は、被相続人の孫は相続人に当たらない場合があります。
(2)子どもがいない場合は、配偶者と被相続人の父母、祖父母、曽祖父母(以下、「父母等」。)が相続人に当たります。
(3)被相続人の父母等も被相続人より先に亡くなっている場合は、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人に当たります。
兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっているときは、兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)が相続人に当たります。
胎児、未成年者
相続人は相続時点で生存していなければなりませんが、民法で胎児は生まれたものとみなされ相続権があります。ただし、遺産分割協議の当事者に含むことはできず、親権者が代わりに遺産分割協議に参加し、胎児に遺産を取得させることはできません。
未成年者も相続人に当たりますが、親権者と利害関係が生じるときは、遺産分割協議の際に注意が必要です。
不在者、失踪者
相続人となるべき者が不在で現在どこにいるのか分からない場合は、共同相続人から不在者の財産を管理する者の選任を家庭裁判所に求めることが必要です。不在者も相続人の一人ですので、相続人全員で行わなければならない遺産分割協議において、その者を参加させずに行った遺産分割協議は無効となるためです。不在者の中で生死不明者がいる場合は失踪者となり、共同相続人は家庭裁判所へ失踪宣告の申立てをすることができます。失踪宣告がされるとその失踪者は死亡したとみなされ、その者についても相続が開始します。この場合は、失踪者の相続人を確定し、失踪者の相続人が相続人に当たります。
◆相続権があるが、相続人として参加したくないときは
相続放棄
被相続人と何十年も疎遠になっているような場合は、遺産は何も要らないから相続手続きにも参加したくないという方もいます。そのときは「相続放棄」という手続きを採ることができます。相続放棄をすると、相続人ではなくなります。被相続人の借金が多額にあり、遺産がマイナスになるような場合も相続放棄をすることができます。相続放棄は家庭裁判所で行う手続きですが、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に手続きをしなければ相続放棄ができません。家庭裁判所の手続きをせずに、単に遺産を放棄するという意思表示のみでは、法律上の相続放棄には当たりませんので、手続き可能な期間に注意が必要です。
相続分の譲渡
自己の相続分を他の相続人や、第三者へ譲渡することができます。相続分の譲渡をした場合は、譲受人が相続人として遺産分割協議に参加します。第三者へ相続分が譲渡された場合は、第三者が遺産分割協議に参加したことから生じる紛争を防ぐために、譲渡人以外の相続人が第三者から相続分を取り戻す権利(取戻権)があります。ただし、取戻権は譲受人に対する譲渡の時から1か月以内に行使する必要があります。
◆相続人となるべき者には該当したが、相続人にならないケース
相続欠格
相続人に該当しており、相続放棄や相続分の譲渡もしていない場合でも、相続権がはく奪される「相続欠格」にあたる場合が民法で定められています。被相続人に詐欺や強迫によって相続に関する遺言書を作成させた場合や、相続に関する遺言書を偽造、破棄、隠匿した者等は相続欠格に該当し、相続権がありません。
相続人の廃除
被相続人が生前に相続人となる者から虐待等があった場合に、被相続人が家庭裁判所へ請求し、その相続人となる者の相続資格をはく奪する「相続人の廃除」という制度があります。この制度で相続人から廃除された者は、戸籍謄本等にその旨が記載され、相続権がありません。
相続財産を調査する
相続人が確定したら、次にどの遺産があるかを調査します。
◆不動産
権利証や固定資産税の納税通知書から被相続人の所有している不動産を調査します。法務局で登記事項証明書を取得し、被相続人の所有している割合(単独名義か共有名義)を確認します。登記事項証明書は手数料を支払えば誰でも取得することが可能な書面です。不動産の権利の移り変わりを記しており、名義がどのように移り変わっているか、また、銀行に借入れする際に担保として不動産を提供していないか等確認することができます。登記事項証明書を取得するときは、取得する不動産を特定して請求しなければならず、土地なら「地番」、建物なら「家屋番号」が必要になります。これは住所とは違い、それぞれ不動産ごとに割り振られた番号になっています。自宅の家屋の登記事項証明書を取得する場合は、自宅の住所以外に、権利証や固定資産税の納税通知書に付随している課税明細書を持参して法務局へ行く方が、調査の時間を減らすことができます。
◆預貯金
預貯金は通帳やキャッシュカードから調査をします。相続が発生したことを銀行等に通知すると、被相続人の口座は凍結され、その日以降の入出金ができなくなります。相続財産として残高がいくらか分からないときは、銀行等に残高証明書を請求することができます。被相続人の口座にあった預貯金の残高は、相続手続きが進み最終的には預貯金を取得した相続人へ払戻しがされますが、利息や手数料等で預貯金の残高が変わることも多いので、金額で分割する際は注意が必要です。遺産分割協議では銀行の口座ごとに取得する者を決めることもできます。
◆株式(有価証券)等
株式(有価証券)は証券会社から送られている証券口座の取引履歴や通知書等から割り出します。銀行等と同様、相続が発生したことを通知し、どの銘柄の株式を保有しているか不明なときは、残高証明書を取得します。預貯金と違うところは、被相続人の名義のままでは株式等を換金することができないことが多いです。株式等を取得した相続人の名義の証券口座へ移管する手続きを経由する必要があります。相続人が被相続人と同じ証券会社の証券口座を持っていない場合は、口座開設が必要となることが多く、銀行等の相続手続きより時間がかかります。
◆相続財産に当たらないもの
生命保険金
生命保険金は被相続人以外の特定の者が受取人となっている場合は、その受取人の固有の権利となり、遺産には該当しないものになります。
遺族年金・死亡退職金
遺族年金や死亡退職金なども同様に受取人が被保険者以外の特定人である場合は、受取人の固有の権利となるため、遺産には該当しないものになります。
祭祀財産
系譜、祭具、墳墓等の祖先祭祀のための財産は、通常の財産とは異なり、祭祀を主宰する者が承継します。遺言によって祭祀財産を承継する者を定めることもできます。
遺産の分け方を決める
遺産の分割方法
調査が終わり、遺産が確定したら遺産の分割方法を決めます。分割方法は(1)有効な遺言書がある場合、(2)法律で定められたとおりに相続人に分割する場合(法定相続)、(3)遺産分割協議の場合から当てはめていきます。(1)の有効な遺言書があればその遺言書に基づいての手続きに進みますので、遺言書の有無は重要な事項になります。遺言書が無い場合は(2)の法定相続か、(3)の遺産分割協議になります。相続人の中に未成年者や行方不明者、認知症の方がいる場合は手続きが煩雑になりますので、専門家に相談することをおすすめします。(3)の遺産分割協議は原則相続人全員で行わなければ有効となりません。相続財産が不動産・預貯金・株式等といくつもある場合は、共有でその物を保有することが難しいこともあり、遺産分割協議によって相続人で取得割合を自由に決めることができます。
まとめ
ご家族であっても、被相続人が所有している銀行口座や証券口座が分からないことも多く、そういった場合はさらに調査に時間がかかることもあります。遺言書を作成することも大切ですが、遺言書でなくても日記等でも自身の財産を記しておくことで、相続人になる方の負担を減らすことができます。預貯金なら銀行名・支店名・口座番号を、株式(有価証券)等なら証券会社名・取扱店・口座番号等書き留めておくことをおすすめします。
生命保険金等も特定の者が受取人となっている場合は相続財産には当たりませんが、相続手続きをスムーズに行うために、生命保険会社から送付される書面等、契約内容の分かるものを保管しておくことをおすすめします。
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