今まで数多くの相続の場面に立ち会ってきました。今日はその中でも難しかったお話をさせていただきます。とあるご夫婦(お子様はおられない)の双方の、任意後見と身元引受を受任していた時の話です。ご主人は足が少し弱っておられました […]
老後生活の不安として、介護・認知症・老後資金・相続などの悩みがあります。安心して老後を送り、相続にまつわるトラブルを避けるには、元気なうちに生前対策をしておくことが重要です。独身か既婚か、子どもがいるかいないか。状況や家族構成によって配慮すべき点があります。今回はそれぞれのケース別に、生前対策のポイントについて解説していきます。
生前対策とは、老後の生活や高齢期の財産管理、相続などについてあらかじめ対策を立てておくことです。超高齢社会である日本においては誰しもが認知症や介護のリスクを背負っていますので、生前対策はひとりひとりが取り組まなければいけない大切な課題といえるでしょう。
万一に備えて対策をしておくことで、なにより安心して生活ができます。これは、ご本人にしても、家族にしても同様です。
生前対策をせずに相続を迎えるのは、保険に入らずに自動車に乗るのと同じことだという人がいます。生前対策は、自身が、そして家族や自分に関わる人たちが、幸せな未来を迎えるために欠かせない準備と言えるでしょう。
生前対策は財産管理対策(認知症への対応)、遺産分割対策(争続とならないために)、そして相続税対策の3つの観点から考えていく必要があります。
まず財産管理を考える上で、最も重視すべきは認知症への備えです。任意後見や民事信託(家族信託®)を活用して、認知症対策をしておくことは、ご本人やご家族の安心につながります。
次に遺産分割対策ですが、相続について何も決めないまま亡くなってしまうと、相続人同士が揉めるという事態を招いてしまいがちです。遺言書を作成する、民事信託(家族信託®)の遺言機能を活用するなどして、誰に・どの財産を遺すのかを自分の想いを形にして遺しましょう。相続人同士で不公平感が出ないように、遺留分などへの配慮は欠かせません。
独身の単身世帯の場合は、認知症対策から相続対策までトータルな準備が必要となります。認知症対策をどうするか、亡くなった後の死後事務手続き、財産の処分は誰に託すかなど、ひとつひとつを決めておくことが、老後の安心につながります。おひとりさまの生前対策として、どのような点を意識すべきか解説します。
おひとりさまの場合、生前対策を行わないことで遺産が国庫に帰属されてしまうというリスクがあります。また、認知症を発症した時にサポートをしてくれる法定後見人が見つかるまで、適切な治療を受けられなかったり介護施設への入所が遅れたりすることが予想されます。
元気なうちに財産の管理・処分、葬儀、お墓や供養のことまでプランを立てて、希望通りの終活を実現しましょう。
独身の場合は、亡くなった後に遺産を適切に処理してもらうために遺言書を作成しておきましょう。友人や知人など相続人以外にも遺贈という形で財産を譲ることができます。
また、認知症など判断能力が低下したときに備えて、信頼できる人もしくは弁護士、司法書士などの専門家と任意後見契約を交わしておくことも重要です。自分が他界した後の事務手続き、いわゆる死後事務に関しては、専門家と死後事務委任契約を結んでおけば、カバーできます。
民事信託(家族信託®)を活用すれば、生前の財産管理から、財産の分け方まで一貫して指定することができます。財産管理は任意後見、相続は遺言といった具合に、個別の対策をそれぞれ行うのは面倒だという方は民事信託を検討するのもよいでしょう。
また、収益物件を保有している方の場合は、資産運用を自由に設計できる民事信託(家族信託®)を選択することをお勧めします。
ただし民事信託(家族信託®)では身上監護はカバーできませんので、おひとりさまの場合、任意後見契約との併用も検討の余地があります。
夫婦で子どもがいないケースの生前対策では、まずは残された配偶者が安心して暮らせる環境を整えることが肝心です。特に亡くなった配偶者の兄弟姉妹とのトラブルに配慮する必要があり、その点、遺言書作成などの生前対策が大きな意味を持ちます。
子どもがいない夫婦の場合は、亡くなった配偶者の親や兄弟姉妹と、相続を巡ってトラブルが発生してしまうリスクがあります。相続人が配偶者のみであれば、法定相続分として配偶者が被相続人の財産をすべて相続しますので問題になることはないでしょう。
しかし、被相続人の父母と兄弟姉妹がいる場合は、配偶者と父母が相続人になり、父母が無く兄弟姉妹がいる場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。
父母や兄弟姉妹が相続人となった場合、一定の割合の法定相続分が認められていますので、被相続人が財産すべてを配偶者に相続させたいと考えていたとしても、配偶者以外の相続人が法定相続分を主張して揉めてしまう可能性があるのです。
民法で定められた法定相続分はあくまで基準であり、話し合いの結果によって法定相続分と違った形で合意することは可能です。しかし、配偶者と親族が疎遠であったりすれば折り合いがつかず、遺産分割協議書を取りまとめるだけでも苦労してしまいます。
そうなると、残された配偶者が充分な財産を相続することができず、生活資金や住まいを確保するのに困ってしまうケースがあるため注意が必要です。
配偶者の親や兄弟姉妹とのトラブルを避けるためには、遺言書を作成しておくのが適した手段です。なぜなら、遺言書は財産の処分に関して被相続人の意思を反映させられるからであり、誰にどれくらい財産を渡すかを自由に決められます。
遺言で書かれた相続分は指定相続分となり、法定相続分より優先されます。ただし、遺留分には配慮が必要です。遺留分は各相続人が相続できる最低限の金額であり、法定相続分の2分の1の額となります。親には遺留分が認められていますが、兄弟姉妹には遺留分はありません。従って、配偶者と兄弟姉妹が相続人のパターンでは、遺言書で指定すれば配偶者に全財産を承継させることが法律上は可能です。
遺言書があれば遺産分割協議が不要です。配偶者が将来的に自分の親族と相続を巡って争うことなく、安心して暮らせるように、早めに遺言書を作成しておくことが大切です。
財産の多くを自宅不動産が占める場合には、生前対策をきちんと行っておかなければ、亡くなった後に自宅不動産を巡って争いが生じやすくなります。配偶者のために長く住み続けた自宅を守りながら、争族にしないためにはどんな対策をすればよいのでしょうか。
小規模宅地の特例が適用されれば、相続税を計算する土地評価額は最大で80%が減額されます。そのため、相続税の負担は大きく抑えることができます。ただし、複数の不動産を所有している場合は納税資金を確保しておく必要があるので、生前対策が重要になるでしょう。
最も生前対策をしておかなければならないのは、相続財産の中で自宅が大部分を占め、かつ複数相続人がいるケースです。現物である不動産を分割するのは難しく、争いになりやすいのです。遺産分割のために自宅を売却して現金化しようとすれば、配偶者が被相続人とともに長く住んでいた自宅を売却しなければならない事態も起こりえます。
不動産が財産の大部分を占める場合には、遺言書を作成することで誰に遺すのかを明確にしておくとよいでしょう。たとえば配偶者に相続させたいときは、「自宅は妻のものとする」ときちんと書いておくことが重要です。
配偶者が一定期間、または終身、被相続人と暮らしていた住まいに住み続けられる権利「配偶者居住権」が2020年に施行されましたが、こちらも自然発生する権利ではなく配偶者が主張しなければならないものなので、やはり遺言書で自宅は配偶者に遺したいという意志を明確にしておいたほうがよいでしょう。
ただ、他の相続人の遺留分を侵害してしまうと、後からトラブルの原因となってしまうので注意しましょう。法的効力は伴いませんが、遺言を書いた経緯などを付言事項として記すなど、被相続人の遺志を反映してもらいやすくする工夫も大切です。
相続人の判断次第ではあるものの、「遺留分減殺請求をしないでほしい」と記しておくことも、遺志を尊重してもらう1つの方法です。
財産の多くが不動産というケースでは、相続人同士のトラブルを回避するために、不動産を相続しない相続人が相続できる現金を確保する対策をしておきましょう。生命保険を活用し、自宅を残された配偶者が受け取る代わりに、他の相続人には死亡保険金を渡すなどすれば、相続人間での不公平感を解消できます。死亡保険金は受取人の固有財産となるので、遺産分割の対象とはなりません。
前の配偶者との間に子どもがいる場合には、遺言書や民事信託(家族信託®)を活用して相続トラブルを回避することがポイントになります。
再婚を経験している場合には、前の配偶者との間に子どもがいると、再婚相手やその子どもとの間で遺産分割を巡ってトラブルになることがあります。前の配偶者との間にできた子どもも相続人となるため、あらかじめ対策を立てておくほうが無難です。
相続人同士の関係が良好であれば問題はありませんが、感情的にぶつかりやすいと分かっている場合には、トラブルを回避する手段をとることが大切です。
生前に遺言書を作成しておき、誰に何を相続させるのかを明確にしておきましょう。遺言書を作成することで、遺産分割協議を省略できるのでトラブル回避につなげられます。
しかし、再婚相手やその子どもにすべての財産を相続させようとする場合は、遺留分に対する注意が必要です。前の配偶者の子どもを受取人とした生命保険をかけておくなどして、きちんとバランスがとれるように工夫しましょう。
再婚相手との間に子どもがなく、自分が死んだ後、まずはその時点での配偶者に相続させ、その配偶者が亡くなった後は、前の配偶者との間にできた子どもに財産を相続させたい場合は、民事信託(家族信託®)を活用しましょう。遺言は1代限りですが、民事信託(家族信託®)は、次の代までも財産の承継を指定することができますので、再婚相手が亡くなった後、前の配偶者との間にできた子どもへの相続をスムーズにします。
長く内縁関係にあると相続する権利も発生すると考えている方がいるようですが、それは間違いです。現在の法律では内縁関係の相手には相続権がありません。財産を相続できず、パートナーが亡くなった後に内縁の相手の生活が立ちいかなくなるケースもあります。そこで、内縁関係の相手に財産を遺すにはどんな方法があるのか紹介します。
内縁関係の相手に財産を渡すための最もシンプルな方法は遺言書でしょう。遺言書で内縁関係の相手を相続人に指定することで内縁関係の相手にも相続する権利が生まれ、無用なトラブルを回避できる可能性が高くなります。遺言書の作成は、内縁関係のパートナーがいる場合、最低限しておきたい対策といえます。
生命保険の受取人として指定できる人は、配偶者や二親等以内の血族であることが一般的です。しかし、保険会社によっては一定の要件を満たすことで、内縁関係の配偶者を受取人として指定できる場合があります。生命保険の死亡保険金は受取人固有の財産となり遺産分割の対象にはならず、他の相続人からの遺留分減殺請求の対象ではありませんので、内縁関係であっても受け取ることができます。
民事信託(家族信託®)は、自宅などの不動産を内縁関係の配偶者に遺したい場合にも使えます。お一人お一人にさまざまな背景があると思われますので、設計については専門家に相談することをお勧めします。
相続人以外の第三者に財産を遺したいケースでは、遺言書の他に、遺贈や生前贈与といった選択肢があります。注意点としては、不動産を遺贈する場合は、相続人全員と連絡が取れない、合意が取れない事態に備え、遺言執行者を立て遺言を執行してもらえるようにしておく。また、贈与については、あらかじめ専門家のアドバイスを受け、税金面で後から大きな負担が生じないように配慮するなどが挙げられます。
長寿社会となり、認知症や介護のリスクは誰にでも起こるものとなりました。そのため、元気なうちに生前対策をしておくことが重要であり、相続発生時に想いに沿った相続が行われるように準備をしておきましょう。みらいリレーションでは法律面からのアドバイスだけではなく、ご家庭の状況に合わせた生前贈与の方法をサポートいたします。豊富な経験とノウハウを持つ行政書士に、ぜひご相談ください。
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