今まで数多くの相続の場面に立ち会ってきました。今日はその中でも難しかったお話をさせていただきます。とあるご夫婦(お子様はおられない)の双方の、任意後見と身元引受を受任していた時の話です。ご主人は足が少し弱っておられました […]
国土交通省が行った平成29年度の調査によれば、所有者不明土地は全体約63万筆のうち22.2%にのぼります。所有者不明土地とは、所有者が直ちに判明しないもしくは連絡がつかない土地のことです。こうした土地は、土地取引や活用の妨げになっています。所有者不明土地の問題を解決するため、現在、さまざまな法整備が進められています。今回は、法整備の内容と土地の所有者に与える影響について解説します。
土地の所有者が誰かわからなければ、売買することも活用することもできず、放置の状態が続くことになります。国や自治体レベルでは「防災のための用地の取得ができない」「森林の管理が適切に行えない」といった問題が生じます。また、不法投棄などの対策も難しくなることから、政府には早急な対策が求められてきました。
所有者不明土地の発生原因のうち、およそ3分の2は名義人の死亡後に「相続登記がされていない」とされています。これまで相続登記の申請は義務化されていなかったため、土地の所有者が亡くなったあとに、適切な名義の引継ぎがなされないケースが少なくありませんでした。
所有者不明土地の発生を防止すること、発生してしまった場合はその活用を円滑にするために、2021年4月21日に「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)が成立し、同月28日に交付されました。ここからは、具体的にどのような点が変更されたのかについて解説します。
所有者不明土地の対策として、もっとも大きな変更点が「不動産登記法の改正」です。これまで任意であった相続登記が義務付けられ、「不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」に登記を行わなければ、罰則として「10万円以下の過料」が課されることとなりました。
これに伴い、相続登記に関する手続きが合理化され、より簡易な手順での登記申請を行えるようになります。
「相続人申告登記」とは、相続人自らが法定相続人であると登記官に申し出ることで、相続登記の義務を果たしたとみなす制度です。登記官とは登記所(法務局)において登記に関する事務を取り扱う法務事務官のことです。登記官の審査を通過すれば、自動的に相続人の住所・氏名が登記に付記されるため、相続登記の手続きが大幅に簡略化できます。
「所有不動産記録証明制度」とは、自身や被相続人が登記名義人となっている全国の不動産を一覧で確認できる制度です。これまで相続登記が正しく行われなかった原因の1つとして、被相続人がどれだけ不動産を所有しているのか、相続人がきちんと把握しきれないという問題がありました。
この場合、相続登記を行う意思があったとしても、見落としによって所有者不明土地が発生してしまいます。そこで、特定の被相続人が名義人となっている不動産の一覧を証明書で発行する仕組みとして、新たにこの制度が創設されました。
改正法では、住基ネットなどを活用して、登記官が職権で名義人の死亡を登記簿に表示できる制度も新設されました。これまでは、登記名義人が死亡しても、相続登記等がされない限りその事実を客観的に確認することができませんでした。
死亡情報が表示される仕組みになれば、公共事業・民間事業者が用地を選定する際に、より交渉しやすい土地を選別できるようになるなど、土地活用のさらなる円滑化が期待できます。
住所・氏名の変更があった際に登記を行わないことも、所有者不明土地を生む原因のひとつになっています。そこで、改正法では相続時だけでなく、不動産の名義人の住所や氏名に変更があった際にも、変更登記が義務付けられました。
具体的には、「変更があった日から2年以内」に登記申請が求められ、正当な理由なしにその義務を怠った場合には「5万円の過料」が課されます。
住所・氏名の変更登記が為されない背景には、「申請が任意である」「行わなくても特に大きな不利益がない」「転居等のたびに手続きを行うのが負担である」などの要因があります。そこで、変更登記が義務化されるのに伴い、手続きの簡略化を図る目的で、登記官の職権で住所・氏名の変更登記ができるようになる見込みです。
具体的には、「所有者本人から申し出があった場合」に限り、法務局側で住基ネットに照会をして、登記官が変更の登記を行えるようになります。本人の意思確認等はインターネットを活用した簡易な方法で行うことが検討されており、今後は変更手続きの手間も大幅に軽減されると考えられます。
「相続土地国庫帰属法」とは、相続または遺贈によって土地を取得した人が、その土地を手放して国庫に入れることを可能にする制度です。これは、相続などで「望まずに取得した土地」の扱いに負担を感じる人たちへの対策になるでしょう。
特に「交通利便性に問題がある」「現在の住所から離れたエリアにある」といった場合には、被相続人が土地を手放したいと考えるケースが少なくありません。そこで、一定の要件を満たして審査に通過した場合には、負担金を納付することで土地を国に管理・処分してもらえる仕組みが設けられました。
改正の施行日については、不動産登記法に関する「相続登記の義務化」や「相続人申告登記」が公布から3年以内、「所有不動産記録証明制度」や「名義人死亡の符号の表示」、「住所・氏名変更への対応」は5年以内と予定されています。また、「相続土地国庫帰属法」は原則として公布後2年以内の政令で定める日とされています。
今回ご紹介したように、所有者不明土地に関する問題の解消に向けて、土地の登記に関するルールは大きく変化しようとしています。適切な登記申請を行わない場合の罰則も設けられているので、トラブル防止のためにも相続登記は速やかに済ませることが大切です。行政書士法人みらいリレーションでは関連司法書士事務所と連携して、土地を所有している方々のサポートを行って参ります。
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