相続特集

~ 実例で見る身近な事業承継 ~

~ 実例で見る身近な事業承継 ~

行政書士法人みらいリレーション福井の中山喜美子です。
今回は、中小企業や小規模事業者の経営者の高齢化が進む中で重要な経営課題になっている「事業承継」のポイントについて事例を交えてご紹介します。

事業承継とは、「現経営者から後継者へ事業のバトンタッチを行うこと」で、人(後継者)、資産(株式、不動産等)、知的資産(経営理念等)を計画的に引継ぐことが重要です。

事業承継の3つの方法

1.親族内承継…現経営者の子息、子女や甥、姪、娘婿などへの承継
2.親族外承継(従業員等)…共同経営者や役員、優秀な若手従業員などへの承継
3.親族外承継(M&A)…身近に後継者候補がいない場合に行う第三者への承継

私自身、行政書士として仕事をする傍ら代々続くまちの洋服屋さんを2021年に父から承継しました。 その時は「家業を父から継いだだけ」であり、自営業の家に生まれた者としては当然のことだと思っていましたが、現状はそうではないようです。

中小企業庁の試算によると、2025年までに70歳を超える中小企業などの経営者は約245万人(社)となり、そのうち約半数の127万人(社)が後継者未定と言われ、「現状を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年までに約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性がある」と発表されています。

また(株)東京商工リサーチの調査(※1)によると、「休廃業・解散企業の56.5%が黒字」であるという結果が出ています。
※1 「2021年「休廃業・解散企業」動向調査」

この「大廃業時代」、後継者不在による黒字廃業を減らし、地域の雇用、事業者の想いを守るためにいま「親族外承継(M&A)」が有力な選択肢になりつつあります。

この「M&A」という言葉自体、「乗っ取り」や「身売り」といったマイナスのイメージが強いように思いますが、今回は私が専門家として籍を置く「福井県事業承継・引継ぎ支援センター(※2)」が、サポートした「まちの駄菓子店」の心温まるM&Aの事例をご紹介させていただきたいと思います。
※2福井県事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは経済産業省の委託事業として47都道府県に拠点があり、中小企業の円滑な事業承継を支援する機関です。(原則相談無料)

◆市内で唯一の駄菓子店が後継者不在で廃業の危機に!
譲渡者:今井勲(79歳)・今井乃ぶ代(80歳)夫妻
譲受者:大石愛子氏(41歳)

舞台は2024年春に北陸新幹線開業を控えた福井県敦賀市神楽1丁目商店街。私の事務所兼店舗もこの商店街にあります。
市内で唯一の駄菓子専門店「夢HOUSE乃ん乃ん」は、オーナー夫妻のこだわりのあふれた可愛らしい店構えで、市内の子供連れだけでなく県外からも同店を目当てに訪れて、記念撮影をする姿が見受けられるほどの人気スポットです。
そんなお店を切り盛りしている乃ぶ代さんは、自身の80歳の誕生日を機に廃業することを考え、その旨を商店街関係者に伝えていました。

 

 

◆後継者として名乗りを挙げたのは?
同店に後継者がいないことは自然に周囲の方々にも広まり、「絶対に残さないといけない場所だ」と考えた大石愛子氏より商店街関係者に問い合わせがありました。
大石さんは集客力の高いマルシェを複数主催しているため人脈が広く、誰からも愛される
お人柄でもあります。

◆マッチングに向けて支援開始!
商店街関係者から話を聞いた私は、双方との面談を重ねた上で顔合わせをセッティング。商店街を想う気持ちにお互いに共感、意気投合したため、福井県事業承継・引継ぎ支援センターの中小企業診断士、弁護士と連携しながら事業譲渡契約に向けた準備を開始しました。
また敦賀商工会議所が、これまで経営をしたことがない大石さんの創業支援を行いました。

 

親族外承継(M&A)に取組むにあたって、今回注意した主なポイントは以下3点。

1.譲渡金額の決定
このようなケースの場合、設備、備品や在庫などを評価して譲渡金額を決定します    が、今回は今井さんのご厚意により、在庫の原価=譲渡代金となりました。

2.不動産
今井さんと大石さんの間で賃貸借契約を締結するにあたり不動産会社に査定を依頼しましたが、こちらも今井さんのご厚意により家賃は査定の約1/3の金額となりました。

3.屋号
乃ぶ代氏の名前が1文字入った「夢HOUSE乃ん乃ん」から、「駄菓子屋のんのん」という屋号になりました。

2022年12月23日(金)に行われた事業譲渡成約式には今井さんご夫妻を労う人達や大石さんを応援する人達がたくさん集まり、終始笑いの絶えないアットホームな式となりました。

今井さんご夫妻による最後の営業日となった12月25日には、新聞やテレビの報道を見た多くの方が花束や手紙を持って同店を訪れ、また2023年1月9日、大石愛子さんの「駄菓子屋のんのん」開店の日には、のんのんの再開を心待ちにしていた子供連れが1日中行列を作っていました。

今回のケースは、地域密着型商店街ならではの特殊な事例かもしれませんが、シャッターが目立つ商店街に大きな希望と勇気をもたらしました。
また本件がきっかけとなり、この地域において事業承継に対する関心が非常に高まっていることを肌で感じています。

これからも地域に愛されているお店、なくしてはいけない事業を次の世代に引継ぐことで、微力ながら地域経済を守るお手伝いができたら嬉しいと思っています。

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