行政書士ブログ

許認可等業務における「ヒト」・「モノ」・「カネ」について

行政書士の独占業務として、官公署へ提出書類を作成する業務があります。なかでも、許可申請、認可申請及び届出に関する業務(以下「許認可等業務」という。)は、私が特に得意とする業務です。今回は、許認可等業務における「要件」についてお話をします。

許認可等業務においては、必ず「要件」がありますが、これを具備し申請することで、許可等が得られます。多くの場合、この「要件」は、「ヒト」・「モノ」・「カネ」を要件としています。それでは、具体的な行政手続を事例に説明します。

 

1.古物商許可申請手続

古物の販売等を行う場合は、古物商許可が必要です。この許可を得るためには、主たる営業所の所在地を管轄する警察署(法的な申請先は都道府県公安委員会)に申請する必要があります。

この手続では、「ヒト」・「モノ」が主な要件です。「ヒト」については、営業所ごとに管理者を1名選任すること、「モノ」については、営業所を置くことです。個人であっても許可を得られますし、資金・財産の要件はありませんので、相対的に許可を得やすい手続といえます。

 

2.宅地建物取引業免許申請手続

宅地建物取引業(以下「宅建業」という。)を営もうとする場合は、都道府県知事又は国土交通大臣から免許受けなければなりません。

この手続では、「ヒト」・「モノ」・「カネ」が主な要件です。

まず、「ヒト」については、事務所や案内所等に、専任の宅地建物取引士を一定の人数を置く必要があります。専任の宅地建物取引士は、事務所等に常勤して専ら宅建業に従事することを要します。また、商号・名称にも制限がありますので、注意が必要です。

次に、「モノ」については、事務所です。事務所とは、継続的に業務を行うことができる施設であり、原則として他の者と共同で事務所を使用することができず、マンションの一室などを自宅と事務所として使用することも基本的にはできません。

また、法人の場合は、商業登記の事務所と実際の事務所の所在地が一致している必要があります。なお、支店を設置する場合も同様です。

最後に、「カネ」については、宅建業を営もうとする場合は、法務局へ本店分として1,000万円を供託しなければなりません。さらに、支店を設ける場合は、1つの支店ごとに500万円を供託する必要があります。ただし、保証協会へ加入し、弁済保証業務分担金を納付することで、法務局への供託に代えることが可能です。そのため、多くの宅建業者は保証協会へ加入しています。

よって、宅建業免許については、その専門性と取引の安全性を考量した制度設計であるため、古物商許可と比較して、少しハードルが高い要件が設けられています。

 

3.障害福祉サービス事業所の指定申請手続

障害福祉サービス事業をしようとする場合は、事業所の所在地の都道府県から事業所の指定を受ける必要があります。ただし、都道府県によっては、市町村へ権限移譲がされている場合があり、指定申請先が市町村であることがあります。

この手続でも、「ヒト」・「モノ」・「カネ」が主な要件です。

まず、「ヒト」については、障害福祉サービス事業所の指定を受けるためには、そもそも法人格を有している必要があります。つまり、個人では指定を受けることができません。

また、居宅介護を例にすると、管理者とサービス管理(提供)責任者が必置であり、サービスに従事する者が最低3名いることも要件として挙げられます。

次に、「モノ」について、やはりこちらでも事務所要件があります。商業登記の本店である必要はありませんが、居宅介護を例にすると、社会通念上、事務所として機能するための機械・器具が必要です。また、事業所の性質上、利用者(障害者)が事務所を訪れることが当然に予想されるため、バリアフリー対策や、周囲に配慮した相談スペースの設置が求められるケースがほとんどです。なお、施設型のサービスでは、さらに厳しい要件があることが想像するに易いですが、今回は割愛します。

最後に、「カネ」については、法人としての資本金に下限などの要件はありませんが、法人を設立し運営する資金が必要となります。当然に、社会保険と労働保険にも加入する必要がありますので、法人としての基本的な義務があり、その運営に最低限必要なランニングコストを要するという意味では、財務的な体力が要件といえます。

よって、障害福祉サービスの指定申請手続は、前述の2つの手続よりハードルが高い要件が設けられています。

 

以上のように、許認可等手続の「要件」は、いずれも「ヒト」・「モノ」・「カネ」で説明することができます。行政庁は、なんの理由もなく「要件」を設けているわけではありません。許可や免許の性質や、その制度の趣旨や背景を考えると、その必要性を理解することができます。

煩雑・複雑にみえる行政手続ですが、このような視点で、簡単に捉えてみてはいかがでしょうか。「やっぱりわからない」という人は、私まで気軽にご連絡ください。

 

行政書士

知花 源

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